【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
息苦しい、な……
いや、ちょっと息が詰まるように感じるだけで、実際にすごく苦しいのは胸の方か。
「……夕李」
『んー?』
「……今日はすごく月が綺麗よ」
待ち合わせをしていたわけでもなく、朝はただばったり彼に会った。
めずらしいことじゃないから驚いたりしなかったけど、出る時間が日によって違ったりするから、頻繁に会うわけでもないし。
『それ。
……好きって意味で、とらえていーの?』
……今朝も会ったのに、もう、会いたい。
わたしも小中学生の頃に、夕李を好きだったら。毎日学校で会えるのが楽しみになっていたかもしれないのに、惜しいことをした。
「……解釈はその人の感じ方次第だから、夕李に任せる」
『かわいくねーなー』
「………」
『……うそ。
はー……いまからチャリ飛ばしてそっち行っていい?』
「え、」
チャリ飛ばしてって……くる、ってことよね?
もう高校生だから、さすがにいま家を出たところで怒られたりはしないだろうけど。来るの?と聞けば、返ってくるのは困ったような笑い声。
『なんか、すげー会いたくなった』