【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「ふは。たしかに、綺世が好きそうなタイプだわ」
「、」
「何かあったら自分ひとりで歩いていける女だけど。
それでも、自分が守ってやらなきゃって思うタイプ」
ふっと笑う彼。
だけどそれを間違ってると思うのは、わたしがひとりで歩いていける女ではないからで。逃げた、から。……夕李のことも、傷つけてしまったのに。
「もういいから、オッサンは早くもどれよ」
「うるせーぞクソガキ。注文は?」
嫌そうな顔をしながらも料理名を口にしたそなたに続いて、わたしも注文する。
「りょーかい」と笑った彼は、仕切りの向こうへと消えた。
「話するために来たのに全然落ち着かねーじゃねーか」
「ふふ。
……百夜月のみんなって、本当に愛されてるわよね」
LARMEに、連れて行ってもらった時もそうだけど。
みんな彼らに親切で優しい。日常のような他愛もない話をしばらく続けて、真剣な話に入ったのは、結局ランチを終えた後だった。
「今日お前のこと呼び出したのは、その……なんつーか。
あいつが動き出してる今、俺もちゃんと言っとくべきだと思って」
「……うん」
嫌な空気ではないけど、楽しい空気ってわけでもない。
個室の中はわずかに重さを孕んで、別の場所から聞こえて来るほかのお客さんの声が、妙に明るく聞こえた。
視線がかち合って、それだけですこし胸が痛い。
だってなんとなく。……彼が言いたいことは、わかってる。