【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「お前が綺世のこと好きだって言ってるの見て、お前に惚れたんだわ。
……だから、俺に悪いとか思わなくていい」
「そなた、」
「……お前が相手だったから、
本気でしあわせになってほしいと思ってんだよ」
本当に、わたしの周りには優しい人ばかりだ。
夕李も、自分ではないほかの人を好きになったわたしのことを好きになったと言ってくれた。わたしも、綺世のことを好きだって胸張って言えるあの瞬間が一番、世界が輝くように見えたこと、自覚してるから。
「そなたには、ちゃんと伝えさせて」
「んー? ……おー」
そっけないけど、ちゃんとわたしの話を聞いてくれてるっていうのはわかる。
ぎゅうっとスカートの上で拳を握って、まっすぐに彼を見つめた。
「わたし、夏休み中に夕李と別れたの。
……やっぱり、何度もあきらめようとしたけど、好きって思える人がいたから」
「は、マジで?」
ぱちぱちと、目を見張るそなた。
こくんとうなずけば彼が口を閉ざしたから、それに促されるように「それでね」と話を続ける。
「音ちゃんのことも結局ちゃんと解決してないから、それが全部うまくいって……解決、したら。
今度こそ、わたしから告白しようって思ってるの」
わたしの、たったひとりの特別な人に。
好きだって、伝えよう。──ずっとわたしを想ってくれていた、本当はとても一途で、綺麗な彼に。
「そなた、好きだって言ってくれてありがとう。
……わたしのこと、好きになってくれてありがとう」
綺世にとって、わたしたちはすごく曖昧で不完全燃焼な別れ方をしたと思う。
わたしの感情がひどく左右されただけで、決定的な事実もあまりわからないままに、わたしの手を離すしかなかったんだから。