【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
だからゆゆがあいつを送るように仕向けろよ、という意味を込めて。
言えば「へえ」と気のない返事。受け取ったレシートを財布に仕舞ってファスナーをジッと閉めたら、唐突に真剣な声で名前を呼ばれた。
「……なんだよ」
「お前その見た目してっけどオオカミじゃねーんだなって」
「……意味わかんねえけどとりあえずど突くぞ」
あいつが綺世の女だって言ってんだろうが。
俺たとえば成人していくら酔ってても、あいつにかわいいこと言われても、綺世の存在がある限りは何もしねー自信あるわ。つーか手なんか出したら殺される。綺世に。
「ふっ、嘘だっての。
……好きな女のために一肌脱いでやれる男ってかっこいいなと思っただけだよ」
……チッ。聞いてやがったのか。
それともゆゆが、あいつをここに連れてきた俺の心情を悟って勝手に話したのか。どっちでもいいけどムカつく。
「あいつに手出したら綺世に殺されんぞ」
「出さねーって。
俺女子高生よりも、人妻のほうが好きだからな」
「どっちにしても殺されるルートじゃねーか」
まじ尊敬できねー先代だわ。
でも現役の時はすげーかっこよかったっていうんだから、なんつーか人生不公平。「また来いよ〜」なんて思ってもなさそうな声で見送られて外に出れば、夏らしい真っ青の空。
暴走族の移動手段ってバイクっつーイメージあるけど。
俺らあんま乗らねーよな、とか思いながら普通に電車に乗って、向かう先は俺らの居場所。熱気がこもるからか倉庫のシャッターは完全に開けられていて、風通し良好だ。
「お前ら、盆もここにいんのか。家帰れよ」
「そなたさん……!
そう言うそなたさんもなんだかんだきてるじゃないっすか!」