【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
そうなんだけどな。
なんなら幹部も全員揃って……ねーか。万理は予定あるっつってたもんな。ゆゆもバイト行ってっからいねーし。
「お前らも何か下行くとかしろよ。
下っ端のほうがまだマシな生活してんじゃねーか」
──倉庫の2階。
いつも通り部屋に入れば、みやが下げてんのかエアコンの温度設定はかなり低め。むしろ寒い。
「あれ〜?
そなちゃん今日来ないんじゃなかった〜?」
「お前も昨日来ねーって言ってひのと会ってたんだろ」
しれっとした顔のみやに言えば、ぱちぱちと目をまたたかせる。
その表情がなんとなく女っぽいなと思っていたら、「会ってた?」と聞いてくるのは綺世。……まあそうだわな。
自分の好きな女が勝手にほかの男と密会してんだから、気にもなるわな。
みやはみやで、思ってもねえのに「やべ」なんて言ってるけど。どうせやましいことなんかねえだろ、お前らの距離間的に。
「あ〜、ちょっとだけ話してただけだっての〜。
……別に綺世の心配するようなことはねえし、あったら今日お前とふたりってわかってんのにここ来てねえよ」
「だろーな。むしろ俺のほうが心配だろ」
エアコンの温度を上げてから自分の席について、しばらく触ってなかったスマホをポケットから出す。
「ひのと会ってたんだろ〜?」と撫でるようなみやの声に、「そー」とそっけなく返した。
「しれっと告ってきた。
……好きな男がいるって断られたけどな」
まあ綺世のことだけど、とはもちろん言わない。
それが自分のことだと思ってんのか、あいつの彼氏のことだと思ってんのか。……あいつが彼氏と別れたことをこいつは知らねーから、たぶん後者だろーけど。
「……そうか」
一言だけつぶやいた綺世が、スッと視線を落とす。
誰よりも大事に思ってる女と、お揃いのそれ。