【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「夕李……!」
──電話を受けて、約10分。
どことなくそわそわしながら家の外で待っていたら、家の前で自転車をとめる彼。駆け寄ると腕を引かれて、ぎゅっと抱きしめられた。
「っ、」
「今日はちょっとこういう気分」
「会いたいって言われたの……
めちゃくちゃ恥ずかしくて、おかげで待ってるのそわそわしてたんだから」
「いーじゃん。たまにはそうやってそわそわすんのも。
俺のこと考えてくれてたんだなってなるし」
……いつもは恥ずかしがるくせに、こんなときだけそんなセリフをすらすら言ってくるのもずるい。
田舎だから夜はすこしだけ涼しくなって、抱きしめ合ってるこの時間は暑いというよりも体温が心地よく感じられる。
「でも、夕李の心臓ばくばくいってるけど」
「それは、っ……
言葉通り急いで来たから仕方ねーだろ……!」
「わたしにはやく会うため?」
「そーだよ」
拗ねたような声すら愛おしい。
心臓の音が徐々にマシになって、わたしの鼓動とゆっくり重なっていくのも好きで、すごくすごく安心する。
「ねえ夕李、っ……、」
──顔を上げれば、予想以上に顔が近い。
思わず言葉をつぐんだわたしに気づいた夕李に「真っ赤」と頬を撫でられて、焼けるように顔の熱が増した。