【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「……綺世。
お前が最後まで反対してたの押し切ってやった俺らが言えることじゃねーけど。……終わらせねーか?」
「、」
「みやが勝手に言ってたんだよ。
"春にお前にできた彼女が実在しない"ってな」
言えば、綺世が視線を動かす。
その視線の標的になったみやは、ぺろっと舌を出して「ごめんよ~」と笑みを浮かべる。……反省してないとかじゃなくて、どう考えても俺らに向けて使う色気じゃねーよな。
「でも、ひのから俺も色々聞いた結果だから〜?」
「おかげで、音は一体なんなんだって聞かれたっつの。
……綺世に聞けっつっといたけど」
あと、あいつが寝不足なのお前のせいだろみや。
……好きな男の彼女が実在しないんじゃ、あいつも悩んだんだろうな。色々と。
「……万理に連絡しとく」
「おー。
……でも、今日はやめといたほうがいいんじゃねーの」
「音と一緒にいるだろうしねえ」
あっさり肯定する綺世に、内心ホッとした。……これでやめねえって言われたらどうしようもなかったしな。
俺らの発言に綺世は"ああ"と小さくうなずいて、それから席を立つ。どっか行くのか?とありがちな問いかけをすれば、一瞬悩んで。
「……コンビニまで行ってくる」
パタン、と扉が閉まってから、みやとどちらともなく苦笑をこぼした。
……コンビニ行こうと思って立ち上がったんなら、悩んでから答えねーだろ。
ぐっと伸びをすれば、ふっと笑っているみや。
「失恋おめでとう」とでも言いたげなそれに顔を顰めて、何もない天井を仰いだ。──さて、と。