【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
暗闇だから、絶対赤い顔なんて見えてないのに。
そんな言い訳ができないぐらい、熱くなったわたしの頬。視線が重なれば夕李が先に逸らして、ふたりして気恥ずかしくなる。
「っ……」
恥ずかしいのは、いっしょなのに。
一歩踏み出すみたいに不器用に引き寄せられて、触れる吐息に目を閉じた。──刹那。
「あ、」
あきらかに夕李のものではない第三者の声に、ふたりして考えるよりもはやく身体を離す。
我に返った頭で赤い頬を両手でおさえながら声の方を見れば、わたしが2年前まで着ていた制服とまったく同じものを着ている彼女。
「かのちゃん……おかえり」
「ただいま。
ごめんお姉ちゃん、邪魔しちゃった」
ごめんね、と申し訳なさそうに手を合わせるその子は、倉敷かの。正真正銘わたしの妹だ。
部活があるからいつもこのぐらいの時間に帰ってくるって知ってたのに、ちょっと油断しすぎだわたし……!
「全然邪魔とかしてねーから。
部活おつかれ、かの。頑張ってるか?」
「ありがと、夕ちゃん。
今年で部活も引退だから、最後にちゃんと頑張ってるよ」
「お、おー。偉いな」
夕李にも褒められて、うれしそうに笑うかの。
人数が少ない分、地元の子たちはほとんどみんな顔見知り。夕李とかのももちろん顔見知りだから、余計に見られると恥ずかしいわけで。
「じゃあ先家入ってるね、お姉ちゃん」
ひらひらと手を振ったかのが家に入ってようやく、ふたりではあ、とため息。
それから顔を見合わせると、慌てて離れたことを思い出して、ふたりで笑ってしまった。