【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「バレてもお前が戻ってきてくれんなら、それでいい。
……ほかのことは望んだりしねえよ」
ああ、ほんとに泣きそうだ。
両想いってこんなに嬉しかったっけ? ……1年前のわたし、ほんとにもったいないことしすぎでしょ。
「お嬢さん。
彼氏と妹を見送った経緯は聞いとかねえとな~」
「へ? あっ……そうだった。
夕李とはもう付き合ってないの。綺世のことが好きだからって、きっぱり夏休み中に別れました」
「……お前が彼氏と別れて綺世のこと好きだっつーから、マジで昨日焦ったんだぞ。倉庫帰ってすぐに、計画中止しろって言ったわ。
俺が一肌脱いだ甲斐があった」
「ありがと、そなた……
でも昨日お店に放置されてたのはびっくりしたわよ。起きたらそなたいなくて、ゆゆに送っていくって言われたんだから」
「げっ、おま……
どう考えてもそれは綺世の前で言うことじゃねーだろ……!」
焦ったように声を上げるそなた。
「放置した?」と聞いてくる綺世に、そなたが何か言いかけたとき。──夜空に、勢いよく花火が打ち上がった。
「あ……、花火、」
「完全にここ来た目的忘れてたねえ。
……うわ、まだ18時半かよ~。早めにきたから結構長く喋ってたのに全然余裕あったな~」
ぱあっと開いた後に、わずかに遅れて聞こえる重い音。
そしてぱらぱらと夜空に光の欠片が散っていくその様子が、たまらなく綺麗で。
「……綺世」
特等席だと言って、みやとそなた、ゆゆの3人がジャングルジムの上で花火を見ようとわたしたちの元を離れた。
音ちゃんと万理も「ふたりで見よう」なんて言って距離を取ったけど、みんなわざとらしすぎる。
だけど、せっかくふたりきりにしてもらえたんだからわがままは言わない。
そっと抱き寄せてくれる彼の肩にもたれかかるようにして空を見上げていれば、彼が動いたからつられるように視線を動かす。