【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
第四章 そして繋がる赤い糸
・混ぜ合う恋のその行方
もし、あの時赤い糸に結び目ができたのではなく、ぷつりと切れてしまっていたのだとしたら。
もう一度結んでやればいいだけの、話だった。
そもそも、運命の赤い糸が1本だなんて決めたの誰だよ。
……もし本当に運命の相手なら、もっとたくさん結びついてる可能性だってあるだろ?
【Side Ayase】
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「ねえお姉ちゃんこれとこれだったらどっちがかわいい!?
ねえねえお姉ちゃん待ってようううう……!」
「ちょっ、かのちゃん離して……っ。
家の外で綺世待ってるから離して……!どっちも可愛いわよかのちゃんならなんでも似合う!」
家の中から完全に聞こえてきている姉妹のやり取りに、思わず苦笑を漏らす。
それは俺の隣にいる"ヤツ"も同じらしく、「懲りねーな」とつぶやいてるけど。……俺はまだ、こいつがひのと過ごした数ヶ月を許したわけじゃねえからな。
「ごめん綺世……!
って、かの!早くしなさい夕李いるわよ!?」
顔を覗かせたひのの肩の上で、さらりとやわらかく髪が流れる。
美人だなと今更なことを思いつつ、「待ってる」と返してやれば、今度中から聞こえてくるのはあいつの妹の声で。
「えっ、夕ちゃんもう来てるの!?
待ち合わせ時間まだ先だよね……!?」
「知らないわよ夕李に聞いて……!
お母さん行ってきます……!かのちゃんまたね!」
「あっ、ちょ、お姉ちゃん……!」
サンダルに足を入れてぱたぱたと駆け寄ってきたひのが、ようやく妹から逃れられたようでほっと息をつく。
そのままお揃いの指輪が嵌るひのの右手を恋人繋ぎで絡め取れば、ヤツは「仲良しだな」とどちらに向けたものでもない笑みを見せた。
「おかげさまで。ごめんね綺世、もうやだかのちゃんとデートの日二度とかぶりたくない……
せっかくの時間がもったいないからはやく行こう?」
「おー、いってら」
ひらり。
手を振って主にひのを見送るヤツの姿が、見えなくなってから。ようやく、浮かんでいる疑問を口に出す。