【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
監視員の人もいるんだから、と。
少なからず見られていることに抵抗があるらしいひの。思わず口づけたくなる衝動を抑えてんだよ、こっちは。
「なんでそんな水着選んだんだよ」
「違っ、これはかのちゃんが選んだの……
そもそも、着る予定じゃなかったし……」
海もプールも行かない予定だったの、と。
水に濡れたひのの手が俺の腕に触れる。かなりぬるいから違和感あるけどやっぱり水だな、と当たり前のことを考えつつ。
「ふぅん? 俺のこと挑発してんのかと思った」
「っ、な……、違っ」
焦ったように言い訳してくるひのが可愛くて困る。腰に回した腕でさらに引き寄せて、抱きしめればおそるおそる背中に回ってくる手。
んな緊張しなくても、お前に触れられて嫌な気分にはならねえよ。
「……やっぱりお前といるのがいちばん落ち着く」
「綺世、」
「……俺のこと、どう思ってる?」
はじめから、こう聞いとけばよかった。
そうすれば、ひのはちゃんと答えてくれたのにな。気持ちばかりが先走ってうまく噛み合わなかったせいで、何度も何度もズレて遠回りしたけど。
「……すき、」
「ん。……俺も」
……すげえキスしたい。
でもここでしたら、ひのにめちゃくちゃ怒られるのが目に見えてわかる。仕方なく髪を撫でるだけで我慢して、キスはまた後でとゆっくり身体を離した。