【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
偶然?と首をかしげるひの。
さっきも言ったが毎日ひのといたことで、俺も倉庫に顔を出すのは二週間ぶりだ。……まあ二週間顔を出さなくてもなんともねえんだから、随分と平和だな。
「……音と付き合ってる男は?」
「万理、でしょ?」
「ああ。"あの"万理だぞ。
……あいつが「万音って呼ばないで」って言ってんだよ」
めんどくせえ男だなあいつも。
ひのなんかふた文字だからそういう呼び方はできねえし、出来たとしてもさすがにそこまでは嫉妬しねえと思う。……いや、俺もする、か?
「ふふっ、いいじゃない。
万理だけの、特別な呼び方なんだもの」
……特別、な。
あいつらが恋愛関係に嵌ったのは中学ん時で、お互い俺に何度も相談してくるから困った。世間的にまだ"普通"とは思われねえ、あいつらの選んだ道。
それを俺がたやすく勧めてやれるわけでもなければ、あいつらの気持ちを否定するわけにもいかなかった。
結局あいつらが選んだ道を、今はちゃんと親も認めてる。……あの気難しい万理が、自ら手を伸ばした女が偶然にも血の繋がらない妹だったってだけだ。
「……ねえ、昔からずっと気になってたんだけどね」
「ん?」
「いつから……わたしのこと好きなの?」
……ああ、いつも「さぁな」って誤魔化してたんだったか。
俺がひのに惚れたのは、もうかなり前の話だ。
「ひの、中3の時にオープンキャンパス来てただろ、聖蘭の。
……そのときに、俺と出会ったの覚えてないか?」
──約1年半ほど前、中3の冬休み。
俺や万理はともかく、残りの3人があまりにも受験前の割に危機感を抱いてねえから、仕方なく俺と万理が見に行くかと声をかけた。元々、俺と万理は聖蘭を受験するつもりだったしな。