【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「許してもらえなさそうだからやめとくね」
「わたしもやめとくね」
「……お前らはいったい何を交換したんだ」
呆れたような顔をされたけど、まさか寝顔写真をもらいましたなんて言えるわけがない。
お互い彼氏に見られて困るかと思って画像では送り合わなかったけど、どうせなら画像で保存しておいたほうがよかったかも。
パソコンにうつしておいたら、勝手にスマホから消されても残るんだし。
……むしろ現像したのを見られたほうが捨てられて終わりだと思う。あとで万音にデータも送ってもらおう。
「というか、主役のひのちゃんがなんでそんなに隅にいるの?
姫就任のお祝いなんだから、もっとこっちおいでよ」
ほら、と万理に促されて、万音と隅から移動する。
万理の彼女だから万音は姫の資格を持っていないけれど、綺世とはいとこだし。わたしの友だちだし、っていうので出入りを許されてるんだから、そのあたり割とゆるめよね。
「姫にもどってきた感想は?ひのちゃん」
「……うれしい、わよ。
一言しかないの?って思われるかもしれないけど、」
ずっとわたしのことを慕ってくれていたみんなが、「おかえりなさい」と言ってくれたことがすごくうれしかった。
スミにはちゃんと、「綺世とやり直すからごめんね」って伝えてある。
「……また、よろしくお願いします」
そう言えばみんなが、「こちらこそ」って言ってくれる。
そのあと綺世が、おかえりって頭を撫でてくれたから。うれしくてぎゅっと抱きついたら、みんなの視線が散っているうちにこっそりキスをくれた。
「……ただいま」
ふっと笑い合って、絡ませる指にはお揃いの指輪。
演じるためじゃなく、本心から想い合ってるわたしたちを、つないでくれるもの。