【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「っ、あやせ、」
恥ずかしいし苦しいし困る。
瞳がどんどん潤んできて、ぽろっと一粒だけ涙がこぼれ落ちたところで、ようやく綺世が離れてくれた。
「……真っ赤」
「っ、だって綺世が、」
「誘ってきたのは、ひのの方だっただろ?」
たしかにそうなんだけど……!
言いたいことを色々汲んでほしいのに……!と、何も言えずにいるわたしを見て、彼が「ひの」と名前を呼んでくる。
特別甘い声で言われたわけでもないのに、優しいそれのせいで不覚にもきゅんとした。
……だめだ。もう、不意打ちだとかそういうの全部ふくめて、この人に勝てる気がしない。っていうか勝てない。
「ふ、ほんと綺世のことしか見えねえって顔してるじゃねえの。……すげえしあわせそう」
「……まー、昔からこうだっただろコイツは」
黄金コンビが腕を両方の肩に乗せてくるから、重くてジタバタする。
ほんとに重いんだけど……!としばらく暴れてみるけど、一向にのけてくれないから「綺世」と彼を呼べば、綺世は不機嫌そうにふたりの名前を呼んだ。
「はいはい邪魔者は退散するわ〜」
「勝手にイチャついてんのはお前らなのに俺らが邪魔者かよ……
ったく。みや、幹部室行くからちょっと付き合えよ」
「ん〜」
ふたりが階段を上っていって、ここにはわたしと綺世、万音と万理だけ。
ゆゆはずっと下っ端の子たちと何か話し込んでいるから、たぶんこっちにはしばらくもどってこないと思う。