【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



綺世のときはそんなことなかったのに。

夕李と付き合ってからは、感情を浮き彫りにされるみたいで恥ずかしくてしかたない。……それを隠したくてひたすら文句を言うわたしの頭を、今度は不器用に撫でてくる夕李。



「……ばか」



「はいはい」



「……あんまり、大人にならないでよ」



ぼそっと、つぶやいたわたしの声。

それをちゃんと拾った夕李に、「ひの?」と不思議そうな顔をされた。……こんなに恥ずかしいのも全部全部、わたしの知ってる夕李と違うから。



「……夕李が高校生になってから、どんどん大人になってくから、」



恥ずかしいの。

前は感じなかったふとしたところに、"男"を感じさせられて、意識して、理解して空回って。




「そんなにはやく、大人にならないで……」



「……ひの」



「わたしのこと……置いてかないで」



わたしを抱きしめる腕も頭を撫でてくれる手も、むかしは変わらなかったのに、気づけばこんなにも差ができて。

身長だって高くなっちゃって、どんどんかっこよくなっちゃって。



「……置いてかねーよ」



「、」



「置いてかねーし、安心しろって。

……ちゃんとお前のそばにいてやるから」



< 20 / 245 >

この作品をシェア

pagetop