【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
綺世のときはそんなことなかったのに。
夕李と付き合ってからは、感情を浮き彫りにされるみたいで恥ずかしくてしかたない。……それを隠したくてひたすら文句を言うわたしの頭を、今度は不器用に撫でてくる夕李。
「……ばか」
「はいはい」
「……あんまり、大人にならないでよ」
ぼそっと、つぶやいたわたしの声。
それをちゃんと拾った夕李に、「ひの?」と不思議そうな顔をされた。……こんなに恥ずかしいのも全部全部、わたしの知ってる夕李と違うから。
「……夕李が高校生になってから、どんどん大人になってくから、」
恥ずかしいの。
前は感じなかったふとしたところに、"男"を感じさせられて、意識して、理解して空回って。
「そんなにはやく、大人にならないで……」
「……ひの」
「わたしのこと……置いてかないで」
わたしを抱きしめる腕も頭を撫でてくれる手も、むかしは変わらなかったのに、気づけばこんなにも差ができて。
身長だって高くなっちゃって、どんどんかっこよくなっちゃって。
「……置いてかねーよ」
「、」
「置いてかねーし、安心しろって。
……ちゃんとお前のそばにいてやるから」