【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
・波立つ水面のその下で
外の騒がしさが嘘のように、部屋の中は静かで。
秋でも関係なく熱気のこもる部屋を冷やそうとつけたエアコンの機能する音だけがひたすら響く。
しばし沈黙の続くそこで、気の知れた親友といるのにどことなく気まずいのはめずらしいな、と。
スマホから顔を上げれば、かちりと視線がかち合った。
【Side Miya】
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「ひのと、綺世。
……うまくいって、よかったねえ」
部屋に行くと言い出したのは、俺じゃなくてそなたの方だ。
その割に何も言わねえそなたを見かねて先に口を開けば、誰もいねえのを良いことに長ソファに寝転ぶそなた。行儀悪いぞ〜、と揶揄う口調で言えばスルーされる。
うまくいってよかったと思うのは、俺だけなのか?
……まあ、そなたはひののこと好きだからねえ。
「お前さ、マジで自覚してねーだろ」
「……ん〜?」
自覚してねえって、何が?
なんの話〜?と首をかしげる俺に、そなたがあきれたようなため息を吐いた。
「……ひののこと好きだろうが」
「………」
別に、隠してたとかそうじゃなかったとか、そういう問題じゃなくて。本気で、おどろいた。
……なんて?ひののこと好き?誰が?
「お前、ほんとはひののこと好きだろ」
「そなちゃん、俺のことなんだと思ってんの〜?」
俺もう高校生だよ〜?
お前と同い年なんだから、自分の感情かラブに値するのかライクなのかははっきりわかる。ひのに対しては、ラブだとすれば家族としてのラブに近いし、ライクだとしたらとことん友だち以上に近いものだ。