【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



はら、と俺の視界を邪魔していたそれが落ちて。

それでも霞んで見えないけど、そなたが俺から視線を逸らしたってのはなんとなくわかった。……一体いつから、だった?



「すげー気持ち悪いこと言うけどよー。

……俺なんだかんだ、お前のこと好きなんだわ」



「そなた、」



「俺がここに入って、今もずっと馬鹿なことやってるけど、そこにお前がいねーと何も楽しくねーし。

……悪いな。ひのが幸せになってからしか、言ってやれなくて」



お前が気にすることじゃねえよって、言ってやりたいのに。

下唇を噛んでるせいで、言葉を出せない。口を開いたらきっと、情けないことしか言えない。



「言わねーままでいてやってもよかったけど。

……それだと、お前はこの先もあいつ以上に誰のことも好きになれねーままだろうからな」



すげえ良い親友だよ、お前は。

綺世には敵わなくともずっとひののこと好きだったくせに、それ以上に、俺のこと優先してくれて。すげえ馬鹿だって思うけど、俺すら気づいてなかった感情に気づいてくれたのがそなたでよかった。




「俺も……お前のことすげえ好きだよ」



「、」



「……さんきゅ」



声震えてんのは、自覚してるけど。

でもいま伝えなかったら、たぶんちゃんと届かねえから。エアコンの音で掻き消されそうなぐらい小さな声でしか言えなかったけど、そなたは「おう」ってちゃんと返事した。



カーディガンの袖を引っ張って、目元を拭う。

……泣いたの、いつぶりだっけ、な。



「はあ……

まさかこの歳になって、お前に泣かされるとは」



しばらく静かな時間が続いた後、涙を拭い終えると目がシパシパする。

嗚咽を強引に堪えたせいで喉も痛いし、呼吸を整えてから放ったそれに、そなたが迷惑そうな顔をした。



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