【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「……しばらく健気に片思いするわ」
「おー。だから好きにしろって」
「んで、そなたより早くいい女見つける。
なんなら、将来は絶対お前より先に結婚する」
「は!? お前それ卑怯だろ!?」
「……いや卑怯ではねえじゃん」
なんで卑怯なんだよ。
俺の方がスタートダッシュ遅いんだからむしろお前の方が有利じゃん。つーかお前、そういうとこなかったら普通にモテんじゃん。
……俺はこのゆるーい感じ女子に好かれるし。
本気になるまでの時間が問題だけど、女が寄ってくるっていう意味では公平じゃねえの?
「もし女に生まれてたら、
ぜってー俺よりお前の方選ぶわたぶん」
「……俺はお前選ぶけどな」
ペットボトルを離して、顔を上げる。
視線が合って、3秒。──どちらともなく、ふっと噴き出してケラケラと惜しげもなく笑う。
「俺らすげー気持ち悪い会話してんじゃねーか!」
「ふはっ、さっきは好きだって言い合ってたし何だこれマジで〜。
でも俺、ぜったいそなたはお断りだかんな〜?」
「俺も恋愛対象は女だっつーの!」
馬鹿みたいに、ふたりで笑い合ったこの日のことを。
何十年後、それぞれ"特別"を見つけた俺らが、またネタにして笑う日が来るんだけど。もちろんそれを、いまの俺らは知らない。