【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
・倉敷ひのの恋愛遍歴
緊急事態が発生しました。
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それは何気ない日常のひとコマで。
相変わらずわたしと同じように倉庫に出入りしている万音が、最近「テレビ欲しいなー」と言ったことで幹部室に設置された新しいテレビ。
下っ端の子が、家に使ってないのがあるからって譲ってくれたんだけど。
どうして使ってないのか後でこっそり聞いたら、お兄さんが彼女と駆け落ちしたらしく。実家にはもう戻ってこないから、そのお兄さんの部屋にあったのを持ってきてくれたらしい。
……割とスケールが大きくて、びっくりした。
テレビひとつで彼のお兄さんの駆け落ちの話を聞いてしまった。……のだが、問題はそこではなく。
「あ、この人いま映画出てるよねー。
目立った話題のないうちの学校でも、みんなかっこいいって騒いでるよー」
テレビに出てる指さして、そう言う万音。
髪をオレンジに近い茶色に染めたその人は、わたしたちより3つ年上の、最近人気の『ユノ』。人気アイドルグループのメンバーのひとりで、ちなみにわたしはあんまりタイプじゃない。
「そうか……?
ぶっちゃけ俺からすれば、ここにいる幹部の方がコイツよりかっこいいと思うけど」
テーブルに広げた複数の新商品のお菓子を、ゆゆと試食してるそなたがテレビを見てそう口にする。
たしかにみんなかっこいいし目立つもんな、と思っていたけれど万音が言いたいのはそうじゃないらしい。
「たしかにみんなかっこいいけど……!
ほら、芸能人オーラがキラキラしてるじゃんー!」
「でも万理とは違うタイプだよねえ」
「好きな人と目の保養は別でしょー!?」
ね、ひの!と。
万音に唐突に話題を振られたけど、微妙な反応になった。
「わたしは『ユノ』のこと好きじゃないからなんとも……
キラキラしてるのはテレビの中だけよ」
「えー、そんなことないよー。夢がないなー」
好きな芸能人とかいないの?と。
言われるけど特に思いつかないし、あなたの隣で万理が不機嫌になってるわよ、万音。