【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
・見せて魅せられ恋心
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「送ってくれてありがとね、夕李」
──翌日。
約束通り地元から学校まで送ってくれた彼にお礼を言って、彼の好きな炭酸ジュースを手渡す。地元のコンビニが遠いから朝自販機で買ったものだけれど、まだひんやり冷たい。
「お、さんきゅ。
あ、お前これ振ったりしてねーだろうな?」
「そんないたずらしませんー」
地元メンツで騒ぐときなら、するかもしれないけど。
わざわざそんな嫌がらせしないわよとくすくす笑いあってから、わたしの頭にぽんと手を置いた夕李が自転車に跨ったまま「あのさ」とわたしを見下ろした。
「……夏休み、どっかデートしねえ?」
──とくん、と。
心臓が小さく音を立てたのが、ひどく心地よくて。する、と笑ってうなずけば、夕李は安心したみたいに笑った。どうやらちょっと緊張してたらしい。
「地元だと見つかったときめんどくせえしなー。
街の方でどっかねーか探しとくわ。行きたいとこあったら言って」
「うん、わかった」
「じゃーな。……授業がんばれよ」
お互い様、と。
ペダルを踏み込んだ夕李に撫でられた頭に、じわじわと熱を感じるような気がする。……ああもう、ほんと、わずらってる。
「ひーのちゃん」
「ひゃっ!?」
夕李がいなくなってからも、すこしその場に立ちつくしていたわたし。
背後から突然声がかかってばっと振り返ると、めずらしく朝から揃って登校している百夜月の幹部たち。