【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
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「楽しかったね、夕ちゃん」
空も鮮やかに染まる、夕暮れ時。
観たかった映画を見て胸きゅんをゲットしたわたしは、夕ちゃんとウィンドウショッピング。これお姉ちゃんに似合いそうだね、なんて。
「ん、」
言って、何か物思いにふける夕ちゃんに切なくなったりして。
いつの間にか離れた手。それに気づかないように一歩前を歩いて、ぐーっと伸びをする。
「そろそろ帰るよね?
晩ご飯いらないって連絡してないし、」
「かの」
夕ちゃんが、わたしの名前を呼んだ。
「うん?」
「……最後に行きたいとこあるから行こう」
「行きたいとこ?」
どこだろう。不思議に思って首を傾げるけど、夕ちゃんは行き先を教えてくれない。
「ひみつ」って笑うその表情にわたしが弱いってこと、夕ちゃんはきっとわかってるのに。
「かのは、知ってると思うけど、」
行き先も知らないまま、ふたりで歩く。
夕ちゃんが時折サンダルで歩くのは痛くないかと心配してくれて、その優しさにさえ息が詰まった。
「俺は、ずっとかののこと妹みたいに思ってた」