【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
夕ちゃんだから、ずっと好き。
夕ちゃんだから、ずっと一緒にいたい。
その気持ちをわかったように、夕ちゃんは「俺も同じだよ」と言ってくれた。
……何の自慢にもならないし、お姉ちゃんみたいにかっこよくも可愛くもないけど。
「俺と付き合うのは嫌?」
「嫌じゃ、ない、です……」
「じゃあ決まり」
「っ……!」
すぽっと、夕ちゃんの腕の中に収まる。
ずっとずっと、好きだった人。……近くにいたはずなのに、手なんて届くわけがないって、思ってた人。
そんな相手に抱きしめられて、おそるおそるわたしも腕を彼の背に回す。
ぎゅっと抱きしめると、その温度が心地よかった。
「好きでいてくれてありがとう」
耳元で囁かれて、首を横に振る。
お礼を言いたいのは、むしろ、わたしのほう。
「好きになろうとしてくれて、ありがとう……」
「なろうと、ね……
まあ、とりあえず今はそれでいいか」
夕ちゃんが、わたしの頬に触れる。
ビリビリって電気が走ったみたいに動けなくなって、夕日とは関係なく赤くなっているであろう顔で、じっと夕ちゃんのことを見つめた。
くちびるが触れる寸前。
囁かれた「すきだよ」は、お姉ちゃんじゃなくて。……夕ちゃんが"かの"だけにくれる、特別な言葉。
【Fin.】