【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「お前でよくね?」
「……はい?」
「だから。お前を追放する理由にすればいいじゃねーか。
……あいつはお前のこと綺世の元カノだって知らねえから、「新しく好きな女ができた」って綺世に言わせたらいいだろ」
つまりわたしを偽の彼女に仕立てると?
本当は、もう半年前に終わってる関係なのに?
「いいんじゃねえ?
……追放できたら俺らはそれでいいんだわ〜」
フリをするだけだから、彼氏にも迷惑かけねえだろ〜?と。
みやにそれっぽいセリフでそそのかされて、うなずきそうになるのをなんとかとどめる。
……もし、フリだとしても。
自分が夕李と逆の立場に立てば間違いなく、嫌な気分になる。それを彼に味合わせるのだけはどうしても嫌で、素直に「うん」とは言えない。
「んじゃ、とりあえずあいつらにも聞いてくるわ」
「え、ちょっとそなた、」
「ま〜ま〜。結局決めんのは綺世だろ〜?
あいつがお前の気持ち考えずに答え出すようなヤツじゃねえのはよく知ってるでしょうに」
引きとめようとしたのを、さらにみやに引きとめられて。
うっと言葉に詰まったわたしに、優美な笑み。嫌だと言うことも引き下がることもできなくなったせいで、手持ち無沙汰。
空いた手をごまかすように甘いふわふわのキャラメル色の髪に触れると、彼が猫のように目を細めた。
いつだったか、人に撫でられることはまずないと言っていたみや。
やわらかい髪に指をもぐらせて、梳くように撫でる。
空いている左手に戯れるように彼が指を絡ませてくるのを、じっと見つめていたら。
「ひのちゃん、協力してくれるの?」