【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
何がどう曲がって伝わったのか、寄ってくる万理とゆゆと綺世。
ため息をついて「そんなこと言ってないわよ」と口にすれば、ゆゆがこてんと首をかしげた。
「そなちゃんがー、
『ひのが自ら彼女役名乗り出てくれた』って、」
「堂々と嘘つくのね……!」
一部とかじゃなく全部うそなんだ……!
そんなこと一言も言ってないでしょう!?と、そなたを見上げる。いつの間にかみやの手は離れていて、それに気づいたわたしも彼の髪から手を離した。
「でも言ってることはおんなじようなもんだろーが。
どうせお前、協力しねーとか無理だろ」
お人好しなんだからとそなたに鼻で笑われて、むかつくくせに言葉に詰まるのは悪い癖。
たしかにわたしは、人が困っていたら放っておけない性格だ。そのせいで昔から何度も「お人好し」と言われてきたのだけれど。
地元メンツの前では、こんな風に振る舞ったりしない。
気心しれたメンバーの前では、嫌なことは嫌だってはっきり言うし。……百夜月の幹部たちにも、結構はっきり言ってるはずなんだけど。
「……こいつらが騒いで悪いな。
お前が嫌なら無理しなくていいんだぞ」
「……、わかったわよ」
綺世に"嫌なら無理しなくていい"とそんな言い方されたら、断ろうにも断れない。
わたしが彼女のフリをしなかったらきっと、ほかにもたくさん策を練らなきゃいけないんだろうし。ただでさえ忙しいみんなを困らせたくないっていうのは、わたしの本音だ。
「その代わり……
夕李には、あなたたちから説明して」
「、」
「ちゃんと、"フリをするだけ"ってこと。
……わたしが言っただけでも信じてくれるとは思うけど、嫌な気分にさせたくないから」
ちゃんと夕李の許可も取って、と。
割とめんどくさいであろう案件を押し付けてみたけれど。意外にも、5人ともあっさり「わかった」と返事をしてくれて。