【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
まったくもって、いつもどおり。
恋愛面が絡んでこないと、わたしと夕李の会話は途端に面白みがなくなる。……なんていうか、長年一緒にいるから独特のテンポで会話するわけで。
「ひのちゃんってそんな投げやりだったっけ」
斜め前でブラックコーヒーを飲んでる万理に、そう言われてしまった。
……まあ確かに、どっちも投げやりな会話よね。ときどきちゃんと会話が成立してないし、好きなことを好きなように喋ってる感じ。
「地元だとこいつずっとこんな感じだから。
つーか、お前結構派手にあそんでたじゃん中学んとき」
しれっと。
あそんでた、なんて口にする夕李の足を踏んでやろうかと思った。あそんでたって、別に男遊びしてたわけじゃなくて。
「こいつ一時期金髪ギャルで、」
「だまって」
過去の黒歴史を引き出してくる彼氏に冷たく吐き捨てる。
金髪ギャルじゃないし……!ちょっと髪色金髪にしてメイク濃かっただけだし……!
夜に仲良しの女子何人かで集まっておまわりさんに見つかったことはあるけど、小さな田舎で仲良しのおまわりさんだったから結局補導はされてないし……!
断じてギャルではなかった……と、信じたい。
「え、ひのちゃんギャルだったのー?」
「高校生デビューしすぎじゃねーか」
「いまは完全におしとやかなお嬢さんっていう感じ醸し出してんのにねえ」
隣テーブルの3人にそう言葉を投げられて、小さくため息が漏れる。
べつに高校生デビューしたわけでもないし、金髪に染めてたのも中3の夏休み一度だけ。……そういうわたしを見てた妹は、まじめに育ったけど。
「ちょっと反抗してみたくなっただけよ。
そもそもそう言ってるあなたたちだって、暴走族に入ってるんだから、わたしに言えないじゃない」