【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
・終わりの来ない青の先
恋とか愛とか、むずかしいことわかんねえけど。
ただ幸せになってくれればそれでいいって、それは一体どんな感情なんだろう。……友情としての言葉でもなく、恋情としての言葉でもない。
──人を好きになったことってある?と。
いつかの何気ない彼女の問いかけを、いまでもなぜか、ふと思い出す。
【Side Miya】
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暑いねえ、と冷房の利いたファミレスから身を投げた炎天下で、こぼれるため息。
5人でいれば必然的に目立つが、百夜月の倉庫は電車に乗ってここから2駅の場所にあるから、どこにいても目立つ俺らにとってはそれなりに苦痛。
色めいた視線を向けられることにはもう慣れた。
そして同時に、一定の距離を置かれることにも。……関わられるよりは幾分マシだと思うけど。
「あっちーな……、
まだ6月とは思えねー暑さじゃねーかよ」
じっとしてるだけでも汗の滲む気温。
歩いていれば当然暑くて、横目に見たそなたも鬱陶しそうに汗を拭っていた。
……べつに、この時期でも暑いのは構わないんだけどねえ。
太陽が照りつける日は、二輪のシートがすげえ熱くなるから、好きじゃない。……高校入って二輪の免許を取ったけど、学校にも乗っていけねえし。
「今年も猛暑だって言ってたし仕方ないんじゃない?」
「なんか、そういう猛暑のニュースって毎年やってね?
結局毎年暑いんだろってなるわ」
電車の中でもとにかく女性から視線を向けられるけど、誰も気にしない。
羽根が動いて冷気がこっちに来ると、涼しいなと一息ついてようやく口を開いた。
「……ひの、あんな顔するんだねえ」
「………」
誰かに、言ったわけじゃない。
ただそなたが何か言いたげな顔をしたから、やっぱりこいつはひののこと好きなんだろうなとぼんやり思った。
昔から、そうだもんねえ。
……綺世のためにできるだけ感情は抑えてるつもりだろうけど、正直そんなに隠せてない。俺やゆゆが勝手に話題にしてるからってのもあるだろうけど。