【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
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「やっぱ屋上は風吹いて涼しいけど、太陽近いから暑いねえ」
背を預けたフェンスが、かしゃん、と音を立てる。
高校のほとんどが屋上の立ち入りを禁止してるらしいけど、この学校は立ち入りを許されてるから、昼休みなんかは結構人が多い。
その代わり、授業中は人がいなくて快適だ。
……サボりだから見つかったら怒られるけどな。
「こっちの影に入ったらいいじゃない。
太陽が当たらないと、意外と快適に過ごせるわよ」
座り込んで校舎の壁にもたれかかる彼女が、俺を見上げる。
ひのとふたりだけでサボるのはひさしぶりだ。……まだひのが姫だった頃以来だと思う。
「めずらしいねえ。
俺のサボりに乗ってくれんの〜」
フェンスから身を起こして彼女の隣に腰を下ろせば、ふわりとやわらかい風が髪を撫でる。
その拍子に彼女のセーラーのスカーフが揺れて、今更ながら制服似合うな、なんて頭の端で思った。
「最近、ずっと悩んだ顔してるでしょう」
「………」
「思い悩んでることでもあったのかなって」
誤魔化せねえな、と思わず笑ってしまった。
相変わらず、他人のことをよく見てる。……音を追放するために手を貸して欲しいと言われてからまだ日が浅いせいで、悩みたいのはひのの方だろうに。
悩んでる様子どころか、その欠片すら俺らの目には触れさせない。
……いっそ残酷だと思うほどに、ひとりで抱え込むのはひのの悪い癖だ。
「俺の思ってることは、自分にしかわからないわけだろ〜?
相手の気持ちをどれだけ理解しようとしても、どれだけ仲が良くても、その全部を汲み取ってやることなんてできない」
黄金コンビ、なんて呼ばれ方で。
俺はあいつを誰よりも信頼してるし、あいつのことを誰よりも知っているつもりでいるけど。……あいつの気持ちをすべて、わかってやれるわけじゃない。