【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



そなたがずっと、ひのを好きだってことはもちろん知ってた。

好きになったきっかけみたいなのも、ぼんやり教えてもらったことはあるし、それが綺世と付き合ってる時だったことも知ってる。



「相手のために、なんとかしてやりたいっていう俺の気持ちはお節介なのかねえと思ってさ〜」



あいつの気持ちを一番はっきりとわかってやれたら、たぶんこんなに悩んでない。

ひののことを好きだから協力してくれって頼まれたら、そこにいるライバルがたとえどれだけ仲の良いヤツだったとしても、俺はそなたに協力してやれる。



だけど。

あいつがそれを望んでるのかさえ、俺にはわからない。



「……あなたが思うように、お節介だとしたら、」



またふわりと、風が吹く。

真夏の気温の中でも、影に吹く風はひんやり冷たくて心地いい。



のぼせるような言葉ではなく、ひのの前ではどこまでも冷静に話せる気がする。

……その悩みの根本的な原因がひのだと知ったら、こいつはどんな顔をするんだろう。




「それはきっと、そう思ったあなたが実際に行動に移した時じゃないかしら。

相手のためになんとかしてあげたいっていうあなたの気持ちに、相手は感謝してるはずよ」



「……そうかねえ」



「何を言われても何を思っても、相手は大事な親友じゃない。

……そなたはきっと、みやのそういう考えも理解した上で受け入れてくれてる」



「……俺相手がそなただなんて言ってねえよ〜?」



まあ、そなたなんだけど。

なんだかねえ、と薄くため息を吐いて、綺麗な青空を見上げた。俺晴れの日はすきだけど、暑い日は好きじゃねえんだよな〜。



「ひのさ、」



伸ばした右手で、彼女の髪に触れる。

風に揺れて自然と俺の指をくすぐるように動いたそれを見つめて、あえて彼女自身から視線を離した。



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