【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「ほんとはあいつが、
自分のこと好きだって知ってんだろ〜?」
ここまで感情に聡いひのが、あいつの気持ちに気づいてないわけがない。
俺らがあれだけ話題にしているときに口をはさんでこないのも、そなたが自分のことを好きだとわかっているからだ。
「知ってるわけではないもの。
なんとなくたまに視線を感じたり、あなたたちの言動がそんな感じだったりするだけ。……あくまで、"気がするだけ"よ」
「……ひののそういうとこ、俺嫌いじゃねえよ」
どれだけ相手の感情が見え透いていたところで、謙虚に相手の気持ちを思いやって、決して自分の口からはそれを言ったりしない。
特に相手がそなたなら、なおさらそれはあいつにとってありがたいだろう。
……あいつも、たぶん。
ひのが、自分の気持ちに気づいてるってこと、気づいてる。
それなら手を伸ばしてやって欲しい。……なんてそんなことを言ったら、そなたに怒られるな。
俺だって仮に好きな女がいたとして、そなたが「あいつと付き合ってやって」なんて裏で手を回してたら怒るだろうし。
「そなたのことどう思ってんの~?」
「……大事な人よ。
わたしにとって、夕李も綺世も、万理も、ゆゆも、そなたも。……もちろんあなたも、みんな別の意味で特別で、大事な人なの」
「じゃあそなたは、どんな意味で特別?
……俺がどう特別なのかも気になるけど」
ようやく、逸らしていた視線をひのにもどす。
綺麗に長くそろったまつげでふちどられた瞳が俺をじっくりと見据えてから、彼女がにっこり微笑んだ。
「そなたは、いい意味で遠慮なく言葉を交わせる人よ。
いちばん口喧嘩してしまうけど、お互いに言って良いことと悪いことの区別はできてるから、絶対にそれに触れたりしないの」
「たしかに、
ひのとそなたのやり取りは口喧嘩多いイメージだわ〜」
「……兄妹みたいな関係でしょう?
いつも口喧嘩ばっかりで仲が良いわけではないのに、絶対に離れたりしないっていう信頼が確かにあるの。……お兄ちゃんみたいに、特別な人よ」