【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
もしひのが本気で、あいつに兄というポジションを望んでるのなら、どっちにも酷な話だ。
あくまで、"みたいな"関係ってだけで、それ以上でも以下でもないんだろうけど。
「逆に、みやはわたしにとって弟みたいな人よ」
「……弟?
俺はどう考えても弟っぽくないでしょうに」
「イメージだけだとたしかに弟っぽくないけれど、すごく素直でまっすぐなところがわたしにとっては放っておけないの。
でもお兄ちゃんって感じでもないから、やっぱり弟みたいな人よ」
放っておけない、ねえ。
……それは俺から見たひのに対してのイメージそのものだけど、お互いにそこはかとなく危なっかしいと思ってるわけか。
「でもさ。
……ひの、そなたのこと好きだろ〜?」
「あなたには負けるわよ、みや。
わたしの好きもあなたの好きも意味が違うけれど、わたしの"気がする"っていうのがもし本当なんだとしたら、彼とわたしの感情とはかみ合わない」
つまり自分は、そなたを恋愛対象だとは思ってない。
……兄的ポジションにいる男を恋愛対象に見るのが難しいってことは、言われなくてもわかる。
「でも、ひのの今の彼氏……
はじめて会った時に、雰囲気がちょっとそなたっぽいなって思ったけど〜?」
「……不器用なところはよく似てるけど。
やっぱり夕李とそなたは違うんだから、いまのわたしは夕李一筋よ」
「……一筋、ね」
あんまり長いこと付き合ってたってわけじゃねえから、はっきり覚えてねえのが難点だけど。
綺世と付き合ってたとき、ひのってこんなに盲目的だって思わせるようなこと、口に出してたっけな……?
「綺世より、ずっとずっと好きよ」
俺の疑問を掻き消すように付け足された言葉。
どこか深い真意がありそうだっていうのに、やけに薄っぺらく聞こえたそれに、素っ気なく「へえ」と返した夏の日。