【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
第二章 予想外の答え
・唯一無二のおひめさま
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「ん~? まじか、もう1時間経った?
……あー、授業もどりたくねえな~」
案外、屋上からでもチャイムの音は鮮明に聞こえる。それを耳にしてぐっと伸びをした彼が、さっきまでの憂いが消えた瞳でわたしを見つめた。
「そうね」と小さく笑って先に立ち上がると、ぱんぱんとスカートについた汚れを軽く払ってみやに手を差し出す。
「弟扱いですか、おひめさま」
「イメージは弟って言ったけどべつに弟だと思ってるわけじゃないわよ。
……ほら、次の授業いきましょう?」
「ん~……、
サボり癖つくと授業だるいんだよねえ」
わたしの手に、一回り大きなてのひらを重ねる彼。
ぎゅっと握って立ち上がってもらってから離そうとしたら、逆にその手を引かれて、屋上を後にする。
……なぜ、わたしはみやと手をつないでるんだ。
「あなたのことを好きな女の子たちに勘違いされそうだから、
切実に離して欲しいんだけど?」
「はは、んなのいねえから安心しな〜」
「……わたしに喧嘩売ってる?」
そんな綺麗な顔をしておきながら、よく「いない」なんて言えるものだ、と逆に感心する。
ただでさえ綺世の元カノでありながら今でも幹部と仲良しなせいで恨まれているのに、手なんか繋いでたらまた色々言われるだろうし。
……もう恨まれることには慣れたから、いいんだけど。
「あいつら、なんて誤魔化してくれてんだろうねえ?
俺がひのに声かけたら、遠慮したみたいに誰もついてこなかったけど〜」
誰かがついてきていたなら、絶対にみやは悩みを打ち明けてはくれなかった。
この人も、自分の感情を表に出すことをひどく嫌ってる。……嫌っているのか苦手なのかと問われたら、みやの場合はただ苦手なのかもしれないけれど。