【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
俺らにわざと嫌がらせするためにやっただろう張本人は、誰もが目にしたことのあるお菓子のパッケージを取り出してゆゆに放る。
勝手に食っていいよ、っていう意味だろうけど。
「みやちゃん、こういうの好きだっけー?
というか、これって美味しくもまずくもないよねー」
ぼやきつつ、ちゃっかり箱から1本取り出すゆゆ。
こいつ女顔で幼いからタバコとか似合わなさそうだな、と思った通り、絵にはならない。
「ふは。ゆゆがそうやってると頑張って背伸びしてます感出るな~。
……俺駄菓子とか結構好きなんだよねえ」
いる〜?と言葉にした時にはもう、一度手元にもどってきた箱を俺にパスしているみや。
こいつといるとツッコミどころしかねーんだよ。……全部ツッコんでたらマジで疲れるから、そんなに口には出さねーけど。
つーか、ゆゆがリアクションしてくれるしな。
受け取った箱からゆゆと同じように1本だけ抜き取って、みやにそっくりそのまま放って返す。
口に運べば、昔食べた記憶通り薄っすら甘い味がする。……この味をわかってて買うみやの気持ちはよくわかんねーけど。
「駄菓子いいよねー。
そんなに高くないし、美味しいのもあるし」
「ん〜。……そうだねえ」
「え、全然共感してなさそうな声で言われたんだけどそれ共感してるの!?
はっきり「違う」って言われるよりなんかぐさっときたよ!?」
「はは、勘違いじゃねえの〜?
……ま、お前の言いたいこともわかんだけどさ〜。たまに、なんとなく昔にもどりてえな〜って思うことあったりしねえ?」
昔にもどりたい、な。
……誰もが、人生の中で一度は思うことだろうけど。
「俺が知ってる限り、お前昔っから何も変わってねーだろ。
……もどりたいなんて思うことあんのかよ」
こいつとは軽く数年の付き合いになるけど、こいつが変わった部分を俺はひとつしか知らない。
どうせ本人はそれに気づいてねーんだろうし、俺がわざわざ言ってやることもない。元から隠すのが巧いヤツだから、俺以外の誰も気づいてないであろう、こいつの秘密。