【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「こういうのひさびさだね」
「ねー。でも行き先が僕のバイト先なら、僕がバイトしてるときに来てくれて良いんだよー。
普段来ないのにこうやって来ると僕避けられてるのかなーって思っちゃうからー」
ゆゆのバイト先であるカフェについてすぐ。
遅れて来た万理がそう言うと、ゆゆが愚痴をこぼす。店に入ったとこでも飯は食えるけど、奥にいくつか個室があって、俺らが来るときはいつも個室にしてもらってる。
……ここのオーナー、もともと百夜月の関係者だしな。
俺らとも顔見知りだし、女に騒がれないようにしてくれるその心遣いはありがたい。
「俺らが来ても個室使ってんだから、
お前働いてたら会話とかあんま出来なくね?」
「でも毎回違う店行かれたらなんか悲しいじゃんー!」
たまには来てよー!と叫ぶゆゆに、思わずふっと笑みをこぼす。
元から、俺ら幹部は仲が良い。……ひのの存在がなくても、普通に楽しく会話できるぐらいには。
「……なあ」
「ん?なに、そなた」
「綺世は今回のこと……後悔してんのか?」
──唐突に。
和んでいる会話を壊す俺の声のせいで、個室の中で空気がピシッとはりつめる。それには全員が気付いているものの、誰かがそれを和ませるわけでもない。
全員が。
口にしながらも、なんとなく気にしてたことだ。
「……お前がこのやり方望んでなかったっつーのは、誰もがわかってることだけどよ。
まだ、こうやって選んだこと後悔してんのか?」
綺世はいつも、俺らの話にはとことん耳を傾けてくれる。でも。
……自分から、本心を口にすることは滅多にねーから。まわりが聞いてやらねーと、一向に自分の中で溜め込んだままだ。