【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「……してねえよ」
「………」
「乗り気だったかって聞かれたら、お前らも知ってる通り事前までは反対だった。
……でもここまで来たら、もうやめることも出来ないだろ」
「……それ後悔してるかどうかじゃなくてよ〜。
お前がただ単に開き直っただけでしょうに」
「……そうとも言えるな」
綺世にとって、ひのはずっと特別だった。
はじめてこいつが、本気で自分からほしいと思った女。……だから今回のことでも、いろんな感情が付きまとってることは全員が認知してる。
ひのに、代わりの女を演じてもらえば。
いずれひのが傷つくことはわかっていて、それでも、この作戦を実行した。──誰でもなく、綺世のために。
「でも俺が"開き直った"んだとしたら。
……あのときのほうが、後悔してるからだ」
「……綺世」
「ひのがどうでもいい女じゃねえことぐらい、
近くで見てきたお前らがいちばん知ってんだろ」
当たり前だ。
ずっと、俺らがそばで見てきた。……誰よりも綺世に愛されて、誰よりもその分だけ綺世に愛情を返していたひのに、惚れたんだから。
「……なら、ちゃんと本気出せよ?」
俺が好きだと言って敵う相手じゃない。
ほかの誰かを好きになった女でもなく。──綾瀬に惚れたひのだから、好きになった。
ただの倉敷ひのとして出会っていたら、きっと惚れたりしなかった。
どうしようもないぐらい、あいつが綺世のことを好きだったから。──綺世のことしか見えていないその瞳にうつしてほしくなったと言ったら、あいつは「ごめんね」って笑うだけなんだろう。