【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
ころん、と口の中で転がる飴はレモン味。
美味しい、と頬をほころばせていたら、頭の上の重さがすっとなくなった。どうやらようやくわたしを腕置きから解放してくれたらしい。
「なー、聞けよ綺世。
こいつ知らねー間に男つくってたんだぞ」
「そなたはすぐそういう言い方する……」
わたしが悪いみたいじゃない、と頬をふくらませて「彼氏がいるだけよ」と反抗すれば、彼氏?と綺世に聞き返された。
うん、とうなずいて簡潔に夕李のことを伝える。
「というか、別にわたし悪くないじゃない?
綺世にだって、もう新しい彼女がいるんだもの」
「べつに悪いなんて言ってねーし」
拗ねたように顔をそむけるそなた。
綺世はそんなわたしたちを見つめたあと、「気にすることじゃないだろ」と頭を撫でてくれた。
「俺はもうお前と付き合ってるわけじゃない。
ひのが新しく男を作ろうと、ひのの自由だろ」
「ありがとう綺世。
……もう。そなたも綺世を見習ってよね」
口悪いしすぐ文句言うんだから、と。
小言を落としてみやに扇子を返し、ようやく自分の席につく。
バッグを机横に引っ掛けてべったり机に突っ伏していたら、頭上からくすくすと笑い声が降ってきて。
ちらりと顔を横に向ければ目が合った先でやわらかく微笑んだ彼が「相変わらず仲良しだね」と口にする。
……わたしたちの会話、ずっと見てたのか。
「仲良しっていうか……
みんなにまだ優しくしてもらえてるだけよ」
「ひのちゃんだからでしょ?
普通別れてからもあんな風に仲良くできないと思うよ」