【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
寝落ちたひのに「夜中までしゃべってただけか〜」となぜか残念そうなみや。
彼女がわずかに身じろぎすれば髪が流れてうなじがあらわになる。薄らと残されたくせに、やけに"俺の"って主張されてるような気分になるそれ。
「人の女に手出すな、って言われてる気分だよね」
「万理あんまり関係なくね?」
「直接的な意味ではあんまり関係ないけど」
同じことされたら俺もむかつくだろうし、と。
めずらしく素直な万理の意見。こいつの頭の中は案外単純で、音を中心にまわってるにちがいない。……自分からは絶対言わねーけど、音のこと好きなのは見てりゃわかるし。
「そろそろ本格的にはじめようか。
……綺世。放課後うまく、ひのちゃん誘ってね」
素直に意見を言ってた数秒前と打って変わって、思案顔になる万理。
切り替え早ぇし、こういうときのお前の腹ん中すげー黒そうだよな。言わねーけど。
「本気で大事なものは、本気で取りにいかないと」
「……お前に言われなくてもわかってる」
「今日は綺世にひのちゃん送ってもらおう、っと」
「……お前も大概話聞かないな」
慣れ親しんだいとこ同士のやり取り。
めんどくさそうな綺世の言葉に、ふっと笑った万理。……ここの信頼性も、なんだかんだ、俺とみやに似てる。そうなればゆゆがひとりになるとかそういうの、悪気はねーから許せ。
「聞かなくたってわかるぐらい信頼してるからだよ」
──俺がひのに、好きだって言わなかった理由を、何度かみやに聞かれたけど。
本当にいちばん大きな理由にはお前も関係してる、って。まだ何も気づいてねーお前には、教えてやれない。……だから。