【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
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「ん、美味しい……
やっぱり、甘いもの食べてるときがいちばんしあわせ」
「……よかったな」
俺らと同じように、放課後を満喫してる高校生が大半を占めているモール内のフードコート。
ひと段落したから休むかと立ち寄ったそこで、昔と同じようにクレープを頼んでいるひの。限定に弱いひのが食べているのは、夏限定らしいレモンクレープ。
その右手薬指には、クレープを買う前に開封したお揃いのリングがある。
プラスチックでできたコーヒーのパックを持つ俺の右手にも、同じ指に色違いのリング。
単純で手っ取り早い、お揃いにするといえど。
……さすがに攻めすぎだってあいつらに怒られそうだな。
「クレープも指輪も買ってもらっちゃってごめんね」
「……俺らのために協力してくれてんだから、そのお礼だと思っとけよ。
いまさらな話、指輪なんかしてて彼氏に怒られないか?」
わざわざ跡まで残すような彼氏が。
指輪を見過ごせんのか、と。こうやって買ってから話したって、どうしようもねえんだけどな。念のため聞いておけば、こくんとうなずくひの。
「バッグのチェーンに繋いでおいたらわかんないかなと思って。
音ちゃんの前では指につけるから、大丈夫」
「……怒られたら俺から説明する」
「ふふ、大丈夫。
夕李なら、わかってくれるわよ」
「……なんか、ムカつくな」
え?と。
首をかしげるひののくちびるに手を伸ばして、端についた生クリームを指で拭う。それに気づいたひのが顔を赤くしたけど、別にそこに他意はない。
ひのからどう思われたいのか、なんて。
俺に聞くだけ、愚問だと思わないか?