【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
まあたしかに、めずらしい方だとは思う。
地元の子たちで付き合っていたカップルがいたけれど、別れた後はずっと喧嘩の延長みたいにお互い話していないようだったし。
「でも、万理(ばんり)だっていまさらわたしと気まずい関係になるのも嫌でしょう?
わたしもみんなと気まずくなるの嫌だし」
「……そうだね。
あいつらも俺も、なんだかんだひのちゃんとは仲良くしてたいんだと思うよ」
もちろん綺世もね、と。
彼の言葉にくすりと笑って「ありがとう」とお礼を言う。──この地区には、関東一帯をひとつにまとめる暴走族の存在があって。
名前は、「百夜月(ももよづき)」。
いま百夜月は7代目で、そのトップに立つ男が綺世だ。──つまり。
「新しいお姫様には会わせてくれないの?」
……わたしはもともと、百夜月の姫だった。
姫といってもそんなに長い期間一緒にいたわけじゃないから、ちょっとずつ親交を深めていただけの関係。でもいまだに、百夜月の下っ端の子たちはわたしを見ると声をかけてくれる。
「……会ったところで、じゃない?」
「……そうだけど」
「綺世に言ってみたら?
気が向いたら、会わせてくれると思うけど」
この人、広田 万理(こうだ ばんり)も、その百夜月の一員で、彼は副総長。
もちろんというか、みや、そなたも百夜月の幹部だ。もうひとりはまだ来ていないけれど、いまだにわたしは百夜月の幹部たちと仲がいい。
わたしが、姫じゃなくなっても。
……新しい姫ができても、変わることなく。
「……元カノに、
新しい彼女に会わせてって言われるのどんな気分?」
綺世と万理は、聞いたところによるといとこらしく。
あまり雰囲気は似ていないけれど、ときどきふとした仕草が似てる。お互いに信頼しているみたいだし、わたしにはそこまで仲良しの女の子がいないから、ちょっとうらやましい。