【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
「元カノに、新しい彼女に会わせてって言われたら……?
うん、まあ相手にもよるだろうけど……俺はめんどくさいから嫌だって言うかな」
「ほら。
そんなのわたしが言ったら絶対綺世に嫌そうな顔されるわよ」
「ひのちゃんだからいいんじゃない?
案外あっさりいいよって言ってくれるかもよ」
「……絶対うそでしょ」
「ふふっ。だから聞いてみたらいいじゃん」
「みやもそなたもそうだけど。
万里と綺世も、なんだかんだわたしのことからかってくるわよね」
ほんのわずかな欠片になった飴玉を舌の上でゆっくり溶かすように転がして。
しゅわっと広がるレモンの甘酸っぱさに、まぶたを閉じる。……ああやっぱり、夏は気だるい。
「愛があるから揶揄えるんでしょ?」
「あ、いま揶揄ってるの認めたじゃない」
「だってひのちゃん良い反応してくれるからさ。
ついちょっといじめたくなるときあるんだよね」
「……わたしはみんなのおもちゃじゃありません」
飴玉が、完全に溶けてしまう。
……いっそわたしも、わたしの中にある感情も、こんな風にうまく溶けてくれればすこしは気だるさも楽になるのかもしれないけれど。
「じゃあ逆に、
俺はひのちゃんの彼氏に会ってみたいかな」
……きっとそれは、まだ先の話で。
いまはこの気だるさから逃れようと、足掻くことしか、方法なんてないんだと思う。