祐也と私と一平先輩
「一平くんはいっつもそばにいてくれて、私を守ってくれたよね。
いじめっ子とかやっつけてくれたよね。
私はその背中を夢中で追いかけて」


夜風は心地よく私たちの間をそよそよと吹き抜ける。

梅雨前のわずかな晴れ間に存在感をアピールするように輝く月。

もし私に彼がいたら気持ちはもっと高ぶっているだろう。

そんな気分にさせる夜だった。


「俺にとって綾乃は可愛い妹で、子供心に『俺が守らなきゃ』って思ってた」


「うん」


先輩の言葉はいっつも素直に入ってくる。


心地いいってか、安心する。



「それが特別な感情に変わることあるんだな」


先輩は天を仰いだ。


雲ひとつない空には月と競うように満天の星が輝いていた。
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