祐也と私と一平先輩
『真っ白なウェディングドレス着たいな』


『綾乃、今の状況分かってる?』


『きっと天国で一平くんのお嫁さんになれるね』


『....うっ....くっ』


『泣かないで。綾乃は笑った一平くんが好きだよ』


『俺怖かったんだ....独りで死ぬこと』


ああ....そうだ一平くんが私を抱きしめたんだ。

そして、しばらく二人で泣いたっけ。


『ごめん綾乃。こんなことで死んじゃだめだよな』


『一平くんの未来のために?』


首を傾げる私に『いいや』一平くんはうつむいて、

『綾乃の憧れを俺の手で閉ざそうとしてたね。
....俺の人生を綾乃にささげるよ』


そう言ってキスしてくれた....。


ほほを伝う涙は小坂くんの手でぬぐわれていた。


「落ち着いた?」

温かく優しい声が私を包む。


「『綾乃が妹から大切な存在に変わった瞬間』一平さん、言ってたな」


私を後ろからハグする彼の手に自分の手を重ねた。

小坂くんに全体重をあずけて力なく泣いた。


「男って単純でバカな生き物なんだよなぁ....」

小坂くんの発した言葉は、今の一平くんに向けられたものなのか、それとも過去の一平くんに対してなのか、私には分からなかった。

< 310 / 346 >

この作品をシェア

pagetop