祐也と私と一平先輩
祐也と私と一平先輩
私は一平先輩との過去がトラウマになって、
人が悲しんだり苦しんだりすることに敏感だったことを小坂くんが教えてくれた。

その他にも....自分の気持ちを押し殺すことも、感情を押さえてしまうことも。

そんな生き方をしてきたことを今更後悔する気はないし、
先輩を恨む気もない。

だって、一平くんは私を大切にしてくれていたのだから。


むしろそんな大事な時間を共有できたことを幸せに感じてたのだけど。



────放課後の中庭。


『愛し方は違うけど』.....かぁ。

小坂くんの最後のセリフが頭から離れない。



芝生に腰を下ろして時間つぶしにと、独り読んでいた小説は全く頭に入って来なかった。

放課後しかもひと気のない、こんなところでどうして独り読書を決め込んでいるのか.....って、それは。

棚倉先輩に呼び出されたからで。


『謝りたいから放課後に中庭に来て』


下駄箱に入れられたメッセージ。

あの人を信用することは出来ないけど、中庭なら人の目があるし、とりあえず誘いに応じてみた。


「一平くんのお嫁さん、絶対幸せだよなぁ」


優しいし、男気あるし、将来エリートだからお給料いいよねぇ。

うふふ。

イケない妄想にふけって笑っていると、
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