祐也と私と一平先輩
「まあ、落ち着いてよ。だからこれから謝るんじゃないか」


興奮したせいで息が上がってしまった。

よくお母さんが夫婦喧嘩した後『血圧が上がっちゃった』なんて笑ってるけど、まさにこんな感じ?

大きく上下する胸に右手をあてて、自分を押さえる。


「一平とは中学からの付き合いでさ。
綾乃ちゃんのことはよく知ってる。あいついっつも君のこと嬉しそうに話すんだ」


知らなかった。そんな一平くん。

「君を自殺未遂に巻き込んだことで、それがトラウマになって他人の人生に異常に共鳴してしまうことも、『俺のせいだ』って悔やんでた」


そんなことないのに。

かえって一平くんに荷物を背負わせたみたいでヤダな。




「だけどあいつの取った行動を否定するってことは、一平の心を否定することだろ?」

私は黙って棚倉先輩の話に耳を傾ける。


「だって一平はやけとか勢いで死のうとおもったんじゃないから。
あいつなりに悩んで苦しんで出した結果だから」


そう....だったの。

幼い私にはそこまで分からなかった。

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