極上俺様姫
稲葉は、目をぱちくりして、首を傾げた。
「あ、やっぱり、いい」
さすがにそんな話、こいつも聞きたくはないだろう。
「聞きたいですっ」
「え?」
逆にわたしが驚いた。
「聞きたいっすよ。先輩が好きになった人の話。
どんな人だったのか、聞きたいです」
稲葉は真っすぐわたしを見て、真剣な表情で言った。
「…わかった…」
わたしは一つ頷いて、芝生のうえに座った。
「その彼氏とは、三年前に付き合ってた」
言いながら目を瞑ると
あのときの、懐かしい景色が浮かんできた。