極上俺様姫
全く話しが読めていない稲葉は、不安そうな顔でわたしたちのやり取りを見ていた。
「せ、先輩?この人…」
「幼なじみ。
それにしても懐かしいな…。
キョンが小4で転校してからだから…七年ぶりか…」
「そうそう!!あんときはよう泣かされたわぁ…」
「お前ホントに泣き虫だったもんね」
久しぶりに素で笑い会える同級生と話すことが出来た。
楽しい……。
恭二と盛り上がっていると、ふいに稲葉が一人、歩き始めた。
「……一年?」
「俺、教室戻りますね。
次移動教室だし…邪魔してすいませんでした…」
そう言った稲葉の横顔は
いつになく暗かった。
「ちょっと…待てよ、一年!!」
何だよ、あの顔…。
「いばらちゃん!?」
わたしは、呼び止める恭二の声を無視して
稲葉を追いかけた。
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