極上俺様姫
◆8◆
夏祭り当日―。
「いばらちゃんにはピンクが似合うわよぉ」
「いばらは青だろ!」
自他共に認める親バカの父と母は
朝からわたしの浴衣の色で口論していた。
「やだぁ、ピンクのが似合う〜」
「青だって!!」
「母さんたち、浴衣くらい姉さん本人に選ばせよぉよ」
夕方になって、呆れた果てた弟―つぼみが仲裁に入った。
リビングには色とりどりの浴衣が散乱している。
足の踏み場もないな…
これ。
まだ行くって決めたわけじゃないのに。
ため息混じりに俯くと
足元に雑に置かれた黒い布が目に着いた。
拾い上げてみると
それは浴衣だった。
黒い生地に深紅の花が咲き乱れている。
綺麗な浴衣…―。
「母さん、父さん。わたしこれ着て行く」
「だめよぉ!!それママが作ったのよぉ?!」
「綺麗じゃん。この花の刺繍もいいし。
つぼみ、着付けして」
わたしとつぼみは浴衣をもって自室に行った。