藤沢先生の白いキャンバス。(修正済み)

えっ?本当に……。

「で、でもお義父さんに
どうやって説明をするのですか?」

曖昧な理由では納得してくれないだろう。
私達が付き合ってることも知らないのに……。

「どうにかしてみせる。それに
あの人は、いつもそうだ!
自分のことは、さっさと決めてしまうくせに
俺の話をまともに聞いてくれない。
何でも反対ばかりして」

余程悔しかったのか
壁をドンッと力いっぱいに拳をぶつけた。

藤沢先生……。

お見合いが
先生の意思ではないことは分かっている。

本当は、自分の意思を尊重してほしくて
いつも葛藤している。

どうにかしたいのに、どうにもならないこと
それに苦悩してることも……私は、知っている。

「大切な手を壁にぶつけたら
怪我をしてしまいますよ?
これから大事なオペがあるのですから……」

そう言うと先生の手を優しく握った。

「百花……?」

「デートは、また今度にしましょう。
お見合いだって
まだ、どうにかなるかもしれません。
2人でいい方法を見つけましょう」

私は、精一杯の笑顔で言った。

藤沢先生は、何も悪くない。
だから、これ以上自分を責めないでほしかった。

それに……まだ諦めたくない。

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