藤沢先生の白いキャンバス。(修正済み)

「俺は、鳥になっていた。
手が大きな翼で大空を自由に飛んでいた。
好きな場所に行けて……誰にも気兼ねしなくて
本当に楽しかった」

藤沢先生……。

「もうこのまま何処かに行こうかと思っていたら
百花の声が聞こえたんだ。
泣きながら俺を呼ぶから行けなくて
結局戻ってきた。
目を覚ましたら本当に
百花が居るから驚いたが……」

そう言うとフッと笑う先生。

その笑顔に涙が溢れて止まらない。

「すみません……。
私が、色鉛筆なんか……ううん。
公園に行きたいと提案しなかったら
あんな事故にならなかったのに。
景介さんの左手や脚をダメにすることも
無かったのに……」

自分のしたことを謝罪する。

私が、先生の人生をダメにしてしまった。

私のせいだ。

「何故……謝る?
俺は、これで良かったと思っている」

「えっ……?」

私は、驚いて顔を上げた。

これで良かったって……どういうことだろうか?

すると藤沢先生は、ニコッと笑った。

「確かに身体の自由が利かないのは不便だ。
だが今のリハビリは、色々と優れているから
けして治らない訳ではない。それに
俺は、この不自由な籠から抜け出したかった。
今……ようやく抜け出しそうな気がするんだ!」

「俺は……これをチャンスだと思っている。
父の言われてやらされていた医者の道。
毎日の失敗が出来ないプレッシャーや不安から
やっと解放される。自由に生きられる。
そう思ったら……俺は、悔しいよりホッとした」

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