藤沢先生の白いキャンバス。(修正済み)

藤沢先生は、医者を引退した。

天才だと言われ優秀な外科医を無くすことは、
病院にとって非常に残念なことだ。

跡継ぎとしても期待されていたのに……。

院長のお義父さんは、
あれから何も言わなくなった。

反対することもなく、先生の意思を
尊重してくれるように。

医者として、跡継ぎとして諦めたからなのか。
いや、そうではない。

私は、知っている。

お義父さんは、
先生の気持ちにやっと気づいてくれたって……。

だって、何も言わないが伝わってくる。
先生を見る目は、前より優しくなったから。

そして藤沢先生は、
幸い利き手の右が無事だったこともあり
一から絵の勉強を始めた。

専門学校に通い毎日課題の絵を描いたり
コンクールに出品する作品を考えたりと忙しそうだ。

私は、変わらずに看護助手として働きながら
先生を支えていた。

まさか、こんなところで介護経験が
役に立つなんて驚きだ。

そして私達は、あれから結婚して
夫婦になった。

義理の兄妹ではなくなった。

数年後には、
先生は、車椅子になったことや医者の道
そして自分の半生をエッセイにした。

葛藤や支えくれた私のことなどが書かれており
もともと才能があったのかヒットした。
それからも何冊か出している。

世間では、
『天才、車椅子画家』と言われるようになる。

もちろん。描いた作品も人気が出ており
賞を貰ったり、個展を開くようになる。
画集も女性に人気だ。

たくさんの人達に先生の絵を見て
もらえるようになった。

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