懐恋。
「最後あれ乗ろー!!」

明音が楽しそうに言う先には遊園地の定番の観覧車がドドーンとそびえ立っていた。

「おう。じゃあ俺は明音と乗るから桑田は安村とって事で。」

本郷君の一言で乗るペアが決まってしまい、ドキドキと胸が騒ぎ出す。ここまで明音が色々気を使ってくれてなんとかなったけど、密室で静かな空間での二人っきりは上手く出来るのかな?

「じゃあ梨奈ちゃん、降りたらあそこの売店に集合ね!」

明音が本郷君とさっさとゴンドラに乗ってしまって、ドキドキ鳴る胸を落ち着かせる間もなく自分たちの番になってしまった。

「安村さんどうぞ?」

桑田君に勧められゴンドラの中に入って座ると、反対側に桑田君が座ってガシャンと扉が閉まる音が聞こえた。


何話そうか悩んでいたら

「安村さん、今日楽しかった?」

って優しい声が耳に届く。

「うん、楽しかったよ。桑田君は?」

「俺も楽しかった。けど安村さんあんまり喋ったりしなかったでしょ?始めの方。だから嫌だったのかなって。」

あ、うまく話せなかったの気付かれてたんだ…

「その時は緊張しちゃってて…上手く話せなかったの。」

凄い視線を感じるけど目を合わせる勇気はなくて。下を見つめたまま答えるのが精一杯。
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